田沢湖
秋田県仙北市にある日本一深い湖。最大水深は400メートルを超え、瑠璃色の湖面の美しさで知られる観光地だが、この湖には「たつこ姫」の伝説が古くから伝わる。永遠の若さと美しさを願った娘が龍の姿に変わり、湖の主として沈んだという物語で、湖畔には金色のたつこ像が立つ。つまりこの湖は、はじめから「湖底に何かがいる」と語られてきた場所なのである。 近代に入り、湖には別の影が差す。発電と農業のために強酸性の川の水が引き込まれた結果、湖の魚はほぼ死に絶え、固有種のクニマスも湖から姿を消した。「深い湖底には生き物の死んだ静寂が広がっている」という事実が、伝説と重なって独特の空気を生んでいる。 語られる噂は、夜の湖面に人影が見える、たつこ像の周辺で写真に異変が写る、湖岸で視線を感じる、といったもの。日本一の深さゆえ「沈んだものは上がってこない」と語られてきたことも、噂の下地になっている。昼間は遊覧船や観光客で賑わう明るい湖であり、夜間は照明が少なく湖岸道路も暗いため、訪れるなら安全面の注意が先に立つ。伝説の湖として、昼と夜でまったく違う顔を見せる場所だ。
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