エピソード
横須賀市、東京湾の入口に突き出た観音崎周辺に残る隧道群。観音崎は明治期、首都防衛のため東京湾要塞の砲台が築かれた軍の岬であり、物資運搬などのために掘られた煉瓦造りの隧道が今も現役で使われている。手掘りの風合いを残す薄暗い隧道は、それだけで時代の空気を運んでくる。
この場所の噂として最も知られるのが「車で通ると後部座席に女性が座っている」という型の話で、トンネルを抜けた後にミラーを見ると白い服の女性が映っていた、車内の空気が急に重くなった、といった体験談が語られてきた。歩行者からも、隧道内で足音がついてきた、出口に人影が立っていたが近づくと消えた、という話がある。要塞の岬として多くの兵が駐屯し、東京湾の海難の記憶も重なる土地柄が、噂の背景にある。
現地は観音埼灯台と公園が整備された散策地で、昼間は隧道群も含めて戦争遺構めぐりが楽しめる。隧道は現役の生活道路でもあるため、車道での撮影や夜間の騒ぎは危険かつ迷惑になる。歴史の岬として歩けば、噂の意味も違って感じられるはずだ。