エピソード
秦野市と伊勢原市を結ぶ善波峠の旧道に残る古い隧道。新道のトンネル開通後は交通量が激減し、苔むした坑口が旧道の峠にひっそりと残っている。この峠はかつて交通事故が多発した難所として知られ、事故を悼み再発を願う看板が立てられた逸話が語り継がれてきた。峠の噂は、その事故の記憶と分かちがたく結びついている。
語られるのは、隧道内ですすり泣くような声を聞いた、白い服の女性が坑口に立っていた、ラップ音のような乾いた音が車内で鳴った、といった話である。中でも「事故で亡くなった若者の霊が出る」という型の噂が有名で、峠に立てられた看板の逸話とともに全国の心霊スポット好きに知られるようになった。旧道の隧道は音が反響しやすく、風の通り抜けが声のように聞こえることも実際にある。
現在の旧道は地元の生活道路であり、周辺には民家もある。深夜にたむろして騒げば迷惑行為そのものであり、狭い旧道での路上駐車は危険でもある。訪れるなら昼間、峠の旧道の風景として静かに通り過ぎるのがよい。事故の記憶が生んだ場所であることを忘れず、安全運転で。