エピソード
横浜市中区、山手の丘を切り通した道路の上に架かる赤いアーチ橋。関東大震災からの復興事業で架けられた歴史ある橋で、切通しを見下ろす鮮やかな赤いアーチは山手の風景の一部として親しまれてきた。一方で、高い橋という構造ゆえに、この橋では悲しい出来事が起きてきたと語られており、それが夜の噂の背景になっている。
語られるのは、夜に橋の上から下を覗き込む人影を見たが、直後に確かめると誰もいなかった、橋の下の切通しを歩いていると上から視線を感じた、夏でも橋の周辺だけ空気が冷たい、といった話である。切通しは風の通り道であり、体感温度の変化には地形的な理由もあるが、橋を見上げたときの独特の圧迫感は多くの訪問者が口にするところである。
現地は山手の住宅街であり、橋も切通しの道も日常の生活道路である。周辺は横浜の観光エリアにも近く、昼間に山手散策の一部として歩けば、震災復興の土木遺産としての橋の美しさがよくわかる。夜間に騒ぐ場所ではないし、この橋の背景を考えれば、静かに通るのが礼儀だろう。