エピソード
沼田市を流れる片品川の川床が割れるように落ち込む滝で、「東洋のナイアガラ」と呼ばれる天然記念物。轟音とともに水が吸い込まれていく滝壺は、古くから「竜宮に通じている」と言い伝えられてきた。村人が滝壺に願うと竜宮からお椀や膳を貸してもらえたが、返し忘れたことから貸してもらえなくなった、という椀貸し伝説がこの滝には残る。滝壺の底が「別の世界」につながるという感覚は、昔からこの場所にあったのである。
噂として語られるのは、遊歩道で白い影を見た、水音に混じって人の声のようなものを聞いた、滝壺のそばで強く引き込まれるような感覚に襲われた、といったもの。実際にこの滝は増水時の事故が起きてきた場所で、遊歩道には立入禁止線が引かれている。「引き込まれる」という感覚は、轟音と水流を前にした人間の自然な恐怖でもあり、噂と実際の危険がここでも重なっている。
昼間は紅葉と新緑の名所で、遊歩道から間近に滝を見られる。訪れる際は立入禁止線を絶対に越えないこと。竜宮伝説の滝は、正しい距離を保ってこそ美しい場所である。