エピソード
うなぎで知られる汽水湖。もともとは淡水の湖だったが、室町時代の大地震と津波で湖と海を隔てる砂州が決壊し、海とつながった。この決壊口は「今切」と呼ばれ、切れたばかりの場所という生々しい地名が、当時の災害の記憶を今に伝えている。地震と津波で多くの命が失われ、湖畔の集落が水没したと伝えられる、災害の歴史を抱えた湖である。
語られる噂は、夜の湖面に人影が見えた、湖岸で声を聞いた、橋の上から誰かに見られている気がした、といったもの。広大な湖の夜は岸の明かりが遠く、水面の反射が人影に見えることもあるが、今切の来歴を知ってから眺める夜の湖は、確かに独特の静けさがある。
昼間の浜名湖は舘山寺温泉と遊覧船、うなぎ料理でにぎわう東海屈指の観光地である。湖畔をドライブすれば、災害を乗り越えて豊かな汽水の恵みに変えた土地の歴史が感じられるはずだ。