エピソード
浜松と豊橋の県境、本坂峠の旧道に残る大正期の煉瓦造り隧道。この峠道はかつて「姫街道」と呼ばれ、東海道の脇往還として多くの女性の旅人が越えた歴史を持つ。旧トンネルは新道の開通後も通行できるが、夜間に通る車はまれで、煉瓦の坑口が峠の闇にぽっかりと浮かぶ。
東海地方で最も有名な心霊スポットの一つであり、噂の中心は「白い着物の女性」である。坑内で女性が立っていた、通過中に天井から手が降りてきた、ミラーに人影が映った、といった話が数多く語られ、姫街道という土地の来歴と結びついて「旅の女性の霊」として語られることが多い。峠には古い井戸や祠にまつわる言い伝えも残る。
現地は現役の県道で、日中はハイキングや旧道めぐりの人も通る。煉瓦積みの隧道は土木遺産としても価値があり、姫街道の歴史散策と合わせて昼間に訪れるのが良い。狭い旧道での駐停車は通行の妨げになるため注意したい。