エピソード
江戸幕府の財政を支えた日本最大の金銀山。400年の採掘で山がV字に裂けた「道遊の割戸」の景観はあまりに有名である。一方でこの山の繁栄は過酷な労働の上にあった。江戸から送られた無宿人たちは、水替人足として暗い坑内の排水作業に従事し、多くが若くして命を落としたと伝えられる。島内には無宿人の墓と供養塔が残り、今も供養が続けられている。
語られる噂は、坑道跡で人影を見た、閉ざされた坑口の奥から作業の音が聞こえた、といったもの。江戸期の手掘り坑道をそのまま歩ける宗太夫坑では、薄暗い坑内に当時の労働を再現した人形が並び、その静けさが独特の空気を生んでいる。
観光施設として整備され、世界遺産にも登録された。黄金の島の光と、無宿人たちの影。両方を知って坑道を歩けば、この山の冷気の意味が変わってくる。