エピソード
北アルプスが日本海に一気に落ち込む、北陸道最大の難所。断崖と波打ち際のわずかな砂浜が唯一の通り道だった時代、旅人は波の合間を縫って命がけで駆け抜けた。「親は子を、子は親を顧みる余裕もない」ことが親不知・子不知の名の由来と伝えられ、波にさらわれて還らなかった旅人は数知れないと語られてきた。平家の落人伝説も残る、日本の交通史上屈指の「死の道」である。
語られる噂は、断崖下の旧道で旅装の人影を見た、波音に混じって子を呼ぶ声が聞こえた、といった難所の記憶と結びついたもの。断崖の中腹には明治の道、海際には古道と、四世代の道が層をなして残り、コミュニティロードとして歩くことができる。
展望台からは断崖と日本海の絶景が広がる。ここで消えた無数の旅人たちを思えば、今の国道と鉄道のありがたさが身に染みる場所である。