エピソード
東山の一角、かつて「六道の辻」と呼ばれた地に立つ古寺。この付近は平安京の葬送地・鳥辺野の入口にあたり、この世とあの世の境目とされてきた。寺の境内には、平安の官人・小野篁が夜ごと冥府へ通ったと伝わる「冥途通いの井戸」が現存し、京都の中でも最も濃く「あの世」と結びついた場所である。
お盆には先祖の霊を迎える「六道まいり」で賑わい、迎え鐘の音が終日鳴り響く。語られる話は、井戸の周辺で気配を感じた、閉門間際の境内で人影を見た、辻のあたりで誰かに呼ばれた、といったものだが、ここは千年以上「死者を迎える」役目を担ってきた寺であり、それは怪異というより伝統である。
拝観は日中に。特別公開時には井戸を間近に見られる。京都の死生観の核心に触れられる、他に代えのない場所である。