エピソード
京都盆地の北端にある古い池。氷河期からの動植物が生き残る学術的に貴重な池で、国の天然記念物に指定されているが、世間での知名度はもっぱら怪談によるものである。深夜、女性の客をこの池のほとりまで乗せたタクシーが到着すると、後部座席には誰もおらず、シートだけが濡れていた――。日本中で語られる「消えるタクシー客」怪談の代表的な舞台がこの池である。
古くはこの池が「泥の深い底なしの池」と恐れられ、周辺が葬送の地に近かったことも、噂の土壌として語られてきた。浮島が動く池としても知られ、霧の朝の池面は確かにこの世離れした風景になる。
現地は住宅地に隣接する静かな池で、昼間は散策や自然観察の場である。夜のタクシー怪談の池と、氷河期の生き残りが眠る学術の池。二つの顔を持つ、京都らしい奥行きのある場所である。