エピソード
八王子の丘陵、絹の道と呼ばれる古道の頂に残る御堂の跡。明治期、生糸貿易で栄えた鑓水商人たちが建てた道了堂は、絹の道を行き交う人々の信仰を集めたが、養蚕の衰退とともに参る人も絶え、昭和期に痛ましい事件が相次いだことも重なって廃堂となった。現在は礎石と石段だけが雑木林の中に残る。
東京の心霊スポットとして最もよく名前の挙がる場所の一つであり、石段を上る人影を見た、堂跡で視線を感じた、首の欠けた地蔵にまつわる噂を聞いた、といった話が語られてきた。荒廃した堂跡の風景が噂を呼び、噂がさらに人を呼ぶという循環を長く繰り返してきた場所である。
現在、一帯は公園として整備され、絹の道は文化庁選定の歴史の道百選にも選ばれている。日中に絹の道資料館とセットで歩けば、生糸で世界とつながった八王子の近代史が見えてくる。夜間の立ち入りは近隣の迷惑になるため慎むこと。