エピソード
さいたま市東部に広がる見沼田んぼ。江戸時代までここには広大な沼があり、沼には竜神が棲むと信じられてきた。八代将軍吉宗の時代に沼は干拓されて田んぼに変わったが、その際、住処を失った竜神が天に昇った、工事を妨げた、という伝説が数多く残り、周辺の寺社には今も竜神を祀る祠や絵馬が伝わる。首都圏に残された最大級の緑地の下に、竜の記憶が眠っている土地である。
語られる噂は、夜の見沼代用水沿いで人影を見た、田んぼの中に立つ影があった、水路から水音とともに気配がした、といったもの。街の明かりが届かない見沼田んぼの夜は、さいたま市内とは思えない深い闇になり、それだけで十分に非日常である。
昼間は桜並木のサイクリングロードと農風景が広がる憩いの場で、竜神ゆかりの寺社を巡る散策も面白い。都市の中の竜の伝説地として、昼の散歩でこそ味わいが深い場所である。