エピソード
東京都西多摩郡奥多摩町、多摩川を小河内ダムで堰き止めてできた人造湖。都民の水がめとして知られる一方、古くから心霊の噂が語られてきた湖でもある。背景には二つの歴史がある。一つはダム建設が難工事となり、多くの殉職者を出したこと。湖畔には殉職者を悼む慰霊碑が建ち、今も献花が絶えない。もう一つは、湖底に旧小河内村の集落が沈んでいることだ。数百戸の家々が移転を余儀なくされ、人々の暮らしの跡がそのまま水の下にある。
こうした土地の記憶を土台に、湖面に人影が見える、ドラム缶橋(浮橋)を渡っていると水面から視線を感じる、夜のドライブ中に湖沿いの道で白い影を見た、といった噂が語られてきた。周遊道路のトンネル群やカーブの多い湖岸道路は夜間の事故も多く、それが噂を補強してきた面もある。
現地は昼間なら景勝地であり、ダム見学や浮橋歩きの観光客で賑わう。夜間は街灯が少なく道路も暗いため、心霊探訪以前に運転そのものに注意が要る。慰霊碑は殉職者を悼む場所であることを忘れず、興味本位で騒ぐことは慎みたい。