エピソード
雲仙温泉街に広がる噴気地帯。白い噴気が絶え間なく吹き上げ、硫黄の匂いが立ちこめる風景は古くから「地獄」と呼ばれ、キリシタン弾圧の時代には、実際にこの熱湯で殉教者たちが責められた歴史を持つ。地獄の中には殉教碑が立ち、信仰を守って命を落とした人々を今に伝えている。
語られる話は、噴気の中に人影が見えた、硫黄の谷で声を聞いた、夜の地獄で灯が揺れていた、といったもの。もっとも、この場所では「地獄」は比喩ではなく歴史である。観光名所の遊歩道の足元に、信仰と弾圧の記憶が眠っていることを知って歩くと、白い噴気の見え方が変わる。
温泉街から徒歩で回れる遊歩道が整備され、猫が噴気で暖を取る姿も名物である。地獄めぐりと温泉、そして殉教の歴史。雲仙の光と影を一度に体感できる場所である。