エピソード
別府地獄めぐりの一つ、日本最古と言われる天然の「地獄」。酸化鉄などを含む熱泥が池全体を赤く染め、湯けむりを上げる光景はまさに血の池の名にふさわしい。奈良時代の文献に「赤湯泉」として記されたと伝えられ、千年以上前から人々がこの赤い池に地獄を見てきた場所である。
かつて別府の地獄地帯は近寄ることもできない禁忌の土地であり、「地獄」の名はその畏れの名残である。語られる話は、湯けむりの中に人影が見えた、夜に池の方から音が聞こえた、といったものだが、この場所の本領は噂よりも「大地そのものが煮えている」という原初的な畏怖にある。
観光施設として整備され、足湯や血の池軟膏の売店もある。赤い池を前に、千年前の人々が感じた地獄への恐れを想像してみる。それがこの場所のいちばん深い楽しみ方である。