エピソード
周南沖に浮かぶ島。太平洋戦争末期、人間魚雷「回天」の訓練基地が置かれた島であり、若い搭乗員たちがこの島で訓練を重ね、出撃していった。海に突き出た発射訓練場の跡が今も残り、島には回天記念館が建てられて、百名を超える戦没者の遺影と遺書が展示されている。
語られる噂は、訓練場跡で人影を見た、夜の海から音が聞こえた、といったものだが、この島は怪談の島ではなく、二十歳前後の若者たちが命を捧げさせられた歴史を伝える祈りの島である。記念館に並ぶ遺書を読めば、興味本位の噂話がいかに場違いかがわかるはずだ。
徳山港からフェリーで渡れる。トンネルを抜けて訓練場跡へ歩く道は、当時の魚雷運搬路そのものである。静かな瀬戸内の島で、戦争の現実に向き合える場所である。