エピソード
島根半島の北岸にある海蝕洞窟。洞窟は二つあり、「新潜戸」は神話で佐太大神が誕生した神聖な洞窟、そして「旧潜戸」は幼くして亡くなった子どもたちの魂が集まると伝えられる「賽の河原」である。旧潜戸の洞内には無数の小石が積まれ、地蔵が祀られ、亡き子を想う親たちが供えた玩具が置かれている。
語られる話は、洞内で子どもの声を聞いた、積んだ石が崩れる音がした、誰もいないのに気配を感じた、といったもの。しかしここは心霊スポットではなく、子を亡くした親たちの祈りの場として、地元で大切に守られてきた場所である。観光遊覧船で洞窟を巡ることができるが、旧潜戸では静粛が求められる。
神の生まれた洞窟と、幼い魂の集う洞窟。生と死が海の洞窟で隣り合う、出雲の死生観を象徴する場所である。