エピソード
古事記において、この世とあの世の境目と記された地。亡き妻イザナミを追って黄泉の国へ下ったイザナギが、変わり果てた妻の姿に驚いて逃げ帰り、追ってくる黄泉の軍勢を大岩で塞いだ――その「黄泉比良坂」の伝承地がここである。木立の中に大岩が据えられ、「神蹟黄泉比良坂伊賦夜坂」の碑が立つ。
つまりここは、日本神話が定めた「あの世の入口」そのものである。語られる話は、夕暮れに坂で人影を見た、岩の前で強い気配を感じた、写真に異変が写った、といったものだが、場所の性格を考えればむしろ控えめと言うべきかもしれない。近年は「あの世への手紙」を投函できるポストが置かれ、亡き人を想う人々が静かに訪れる場所になっている。
出雲の神話巡りの一環として、日中の参拝を。日本人が千数百年前に思い描いた死後の世界の入口に、実際に立てる場所である。