エピソード
大阪ミナミの繁華街。今や飲食と娯楽の街として不夜城の賑わいを見せるが、この土地の来歴は重い。江戸時代、ここには刑場と墓所、火葬場が置かれ、「千日」の名も千日回向の供養に由来すると伝えられる。明治以降に繁華街へと変貌したが、昭和47年にはこの地のビルで戦後最悪級の火災が起き、百人を超える犠牲者を出した。歓楽街の足元に、幾層もの死の記憶が折り重なっている街である。
語られる噂は、ビルの階段で人影を見た、深夜の店内で気配を感じた、といったもので、土地の来歴と結びつけて語られてきた。火災のあったビルの跡地周辺は、大阪の怪談で必ず語られる場所になっている。
現在の千日前は法善寺横丁にも近い食い倒れの街であり、観光で歩くのに何の支障もない。ただ、この賑わいが供養の地の上に築かれたことを知って歩くと、街の灯の見え方が少し変わるはずだ。