エピソード
熊野灘に面してそそり立つ高さ45メートルの巨岩を御神体とする、日本最古とも言われる神社。『日本書紀』に、火の神を産んで亡くなった女神イザナミを葬った地と記される場所であり、社殿を持たず、巨岩そのものに祈りを捧げる古代信仰の形を今に伝えている。つまりここは、記紀神話における「神の墓」である。
例祭では岩の頂から浜へ約170メートルの大綱を渡す「御縄掛け神事」が行われ、世界遺産・紀伊山地の霊場の一部にも登録されている。語られる話は、岩壁の前で強い気配を感じた、浜辺で声を聞いた、といったものだが、神の墓所で何かを感じるのは、むしろ自然なことと言うべきだろう。
参拝は日中に。国道沿いで訪れやすく、隣接する道の駅からすぐである。熊野詣の始まりの地ともされるこの岩の前に立てば、日本人が千数百年抱いてきた死と再生の信仰の原点に触れられる。