エピソード
南阿蘇の高森町から山都町方面へ抜ける峠道。九十九曲がりと呼ばれる急カーブの連続する旧道は、春には千本桜が咲き誇る名所として知られる一方、古くから夜の峠の噂が絶えない道でもある。現在は新道のトンネルが開通し、旧道を通る車は花見シーズン以外まばらで、夜は完全に人気のない山道になる。
語られる噂は峠道の定番形で、カーブを曲がると白い服の女性が立っていた、バックミラーに人影が映った、九十九曲がりを走っていると後ろからついてくる車がいつの間にか消えていた、といったもの。峠という場所は昔から旅の難所であり、事故も起きやすく、「峠には何かがいる」という感覚は全国共通の古い道の記憶でもある。連続カーブの旧道は現代でも夜間の運転リスクが高く、噂と実際の危険が地続きになっている。
昼間の旧道は桜と阿蘇の展望が素晴らしく、ドライブコースとして十分楽しめる。訪れるなら花の季節の昼間が最良で、夜に走るなら心霊よりもまずカーブと野生動物の飛び出しに注意すべき道である。