エピソード
釧路の山中に眠る炭鉱都市の跡。かつては1万人を超える人々が暮らし、病院・学校・映画館まで備えた一つの町だったが、閉山により住民が短期間で一斉に去り、建物だけが取り残された。北海道を代表する廃墟群として知られ、森に呑まれていく病院跡や煙突は、繁栄と消滅の落差をそのまま形にしたような風景である。
噂として語られるのは、病院跡で白衣の人影を見た、誰もいない建物内から物音や話し声が聞こえた、写真に無数の異変が写った、といったもので、「町ごと消えた」という土地の来歴が噂に厚みを与えている。現地は山深く、携帯の電波も届きにくいヒグマの生息域である。建物は倒壊が進み、立ち入りは危険を伴う。廃墟としての知名度に反して、ここに眠るのは実際に人々が生き、働いた町の記憶であることを忘れずにいたい。