エピソード
加賀市の篠原古戦場跡に残る小さな池。源平の合戦で、老将・斎藤実盛は白髪を黒く染めて出陣し、この地で討ち死にした。首実検の際、この池で首を洗うと墨が流れて白髪が現れ、それが旧知の実盛と知れて敵味方ともに涙した――と平家物語に語られる、その池である。芭蕉が「むざんやな甲の下のきりぎりす」と詠んだのもこの地であり、実盛の兜は近くの多太神社に現存する。
語られる噂は、夕暮れの池のほとりで武者の人影を見た、池の水面に顔が映った、といった伝承と結びついたもの。老いを隠して戦場に散った武将の物語は八百年語り継がれ、実盛を悼む虫送りの行事は今も北陸各地に残る。
古戦場跡は静かな史跡公園で、池のほとりには実盛塚や芭蕉の句碑が立つ。平家物語の一節がそのまま風景として残る、北陸屈指の伝承地である。