エピソード
日本最大級のアーチ式ダム。戦後の電力不足を解消するため、黒部峡谷の最奥に7年の歳月を懸けて建設された「世紀の大事業」であり、工事では171名が殉職した。特に大町トンネルの破砕帯突破は映画にもなった死闘として知られる。ダムサイトには殉職者慰霊碑が建ち、観光放水を見に来た人々が静かに手を合わせていく。
語られる噂は、関電トンネルで作業服の人影を見た、ダムサイトで誰もいないのに声を聞いた、慰霊碑の周辺で気配を感じた、といったもの。峡谷に木霊する放水の轟音と、山を貫くトンネルの冷気は、工事の物語を知る者にとって単なる観光の音ではない。
アルペンルートの中心として夏秋は多くの観光客で賑わう。エメラルドの黒部湖と大放水の虹の裏に、171名の命があったことを、慰霊碑が静かに伝えている。